機能や外観などは他でもレビューされているので、長くなってしまった比較試聴をメインにしたい。
比較試聴
まずは、Fiio M15S。AKは値下がり(セール価格)、Fiioは値上がりして価格が近づいたので、ライバルと言えそうな2機種で比較してみた。イヤホンは、Sony IER-M9をバランス接続で使用。楽曲再生は本体保存では無く、Roonでの最大アップサンプリング(SE300はNOSだと384kHz, 24it、M15Sは384kHz, 32bit)しての再生。
【試聴曲 : Spark, Hiromi the trio project】
- SE300 NOS&A級
イントロのシンセパッドに厚みを感じる。解像度は十分だが、やや中央にまとまって、音の塊の感がある。フロアタムの響きにリアリティがあり、ヘッドの振動が目で見えるかのよう。 - SE300 NOS&AB級
上下左右に広がりが増し、音場が一気に広がる。楽器個々の音に集中するとA級の方がディティールまで見えて関心するが、アンサンブル全体として聞くと、音場の広がりも相まってAB級の方がシャープでキレがあり現代的な出音。個人的にはNOS ABの方が好み。 - M15S
DACチップの性能により、こちらの方が32bitまでアップサンプリングされるが、SE300に比べると、ほんの少し淡さ/ベール感があり曖昧さが大きい。とはいえ、SE300のNOS&A級よりはNOS&AB級に近い。
【試聴曲:milet, Inside you】
The First Takeよりmilet 1stシングルのセルフカバー。ボーカルとアコースティックギターのみによる演奏。
- M15S
ボーカルが前面に出て大いに主張。アコースティックギターはほんの一歩引いたところに位置。前面に出すぎてややボーカルが五月蠅くも感じる。 - SE300 NOS&AB級
M15Sより見通しはクリアだがボーカルのきつさは和らぐ。 - SE300 NOS&A級
更にボーカルが和らぎ、かなり聞きやすくなる。アコギの存在感も際立ち、M15Sの時は脇役だったように感じたが、NOS&AB級の組み合わせでは、対等なコラボレーションとなっている。
この曲ではNOS&A級の方が好み。
上記のとおり、SE300は、曲に合わせて再生表現を変えられる希有な存在と言える。さらに特筆すべきは、NOSとOS、A級とAB級の切り替えが、タッチ一つでスムースに切り替えられること。それぞれの違い、変化の傾向は掴みやすいので、様々なジャンルの曲を次々に聴いているときも、待機や中断無く設定を曲に合わせられる。気分によって変えるのも簡単。陳腐な表現だが、これはすごい。
なお、Tokyo String Quintet, Schubert : String Quintet in C major D.956 1.でも聞き比べてみたが、SE300の方が音により立体感が感じられ、値段なりの高級感が漂うという印象は変わらなかった。
SE300とM15Sのどちらも20万円前後で、スマホ再生や低価格機とは一線を画した体験が出来ることは確か。このレベルだと、いわゆる「解像度」は申し分なく、完全に埋もれてしまう音というのはほぼ無い。自分で集中する箇所を移していけば、その音楽に詰め込まれた全ての音を聞き取ることが出来る(と思う)。その意味で、機械的なスペックは「聞く」ことに必要十分なのだろう。
しかし、細部の違いや作り手の違いが、音楽を「聴いた」ときの感じ方にも表われることは確か。「趣味」としては、追い続けたいところだし、実に面白く、そして飽きない。
続いて、同じAK同士、CA1000Tとの比較試聴も行ってみた。
【試聴曲:Spark, Hiromi the trio project】
正直甲乙つけがたい。ある程度傾向は似ている。CA1000Tは、高解像度の高級DACにほんのり真空管の味を乗せた感じで好み。音の分離感は、幾分SE300よりCA1000Tが勝るか。しかし、全体的な開放感・音場の広さはSE300に軍配が上がる。
違うと思ったは、中域から低域にかけての表現力。導入でスゥイープするシンセパッドでゾクゾクさせられたのはSE300。
【試聴曲:milet, Inside you (The First Take)】
ボーカルの刺さり具合はSE300とM15Sの中間。印象はSparkの時と同じで、解像度・音の分離は最高。でも、どちらか選べと言われればSE300を推したい。
基本的にはSE300は大変気に入り、好きになったが、A級再生時のバッテリーの減りが相当早いのが難点。後は、Androidではないので、Roon Remoteは入れられないので別途Remote用の端末が必要。SP3000とKANN ULTRAはRoon Arcに対応しているので、SE300でも試せればよいのにとは思う。
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